新しさを取り入れながら“きれいなビール造り”を目指す
2024.1.17 INTERVIEW
現在、藤川貴之氏と金炳泰氏の2名体制で醸造をしており、2人共が副醸造長として運営している立飛麦酒醸造所。先代からのこだわりや学びを大切にしつつ、ふたりが学んできたエッセンスを加え“新しい立飛麦酒醸造所”を作りたいと切磋琢磨し新しいビールを造っている。
多摩都市モノレール立飛駅から徒歩10分。住宅街を抜けた先にブルワリー&タップルームを構えるのが立飛麦酒醸造所だ。
2019年に醸造休止した「カミカゼビール」跡地に土地と建物すべてを譲り受け一新し、2021年12月にオープン。最寄駅の名前でもある「立飛」の由来は、遡ること戦前。親会社の前身が、この地に飛行機を設計・製造する立川飛行機株式会社を設立し、その後「立飛」に名前を変更。その立飛を冠した醸造所を立ち上げたのだそう。
副醸造長のひとり、藤川貴之氏は、12年前からビール醸造をしている経験者。韓国出身の金炳泰氏は来日して16年。元々日本酒を醸造してきた経験があり、ビールの醸造家としては6年前からの経験者で「今後は日本酒を造ってきた経験も活かしていきたい」と話す。
立飛麦酒醸造所は、貯蔵タンク6本・発酵タンク4本で、1回の仕込みで2,000リットル醸造できる。都内では他にないほど大規模な設備だ。
先代から続く“きれいなビールを造る”というコンセプトは引き継ぎつつも、遊び心を持ったビール造りや最新のビアスタイルを取り入れてビール醸造を行っている。例えば、アメリカ発祥のビアスタイルでもアメリカンホップのみの使用ではなく別のホップを使用するなど、基本から少しはみ出し、おふたりが考える“おいしい”に辿り着く挑戦をしている。以前は発酵段階で酵母から生み出される炭酸のみのナチュラルカーボネーションだったのが、あとから二酸化炭素を加える強制カーボネーションを採用したことも変化のひとつ。
また、これまで立飛の柱になっていたビールは「クラシック」を大切にしていたが、ここ10年でみても新しいビアスタイルが続々と誕生していることもあり、最新のビアスタイルも取り入れている。写真の金炳泰氏、藤川貴之氏が手にするのは、2周年を記念するメモリアルビール「Black Angel」と「White Devil」。期間限定で販売しているビールだが、これらも2人の色を落とし込んだ“立飛のニュースタイルビール”である。
フラッグシップは「ピルスナー」。麦芽はチェコのザーツに加え、現在は別の麦芽も追加し、ホップの量も増やしている。醸造は11度におさえた状態から徐々に上げていく方法で発酵温度を調整している。「新しい醸造方法によりキレがより増しました。ジャーマンピルスの印象が加わり、日本人の舌馴染みが良くなったと思います」と話す。
また、おすすめのひとつである「ペールエール」はモルトにフォーカスしたものからホップにフォーカスした味わいに進化。ドライホップを採用し、爽やかさと時折見せるフルーティなホップの香りが印象的で、スルッと飲めてしまう軽やかさだ。
そこで造る人によって新しいビールが生まれることを再認識しながら、新しいふたりの副醸造長が、立飛という街でどんな新しいビールを造るのかが楽しみでならない。
タップルームからも見えるノコギリ屋根はかつての飛行機工場。ビールのパッケージにも描かれている。そんな歴史あるノコギリ屋根を眺めながらビールを味わえば、この地の歴史の移り変わりが感じられるはずだ。
立飛⻨酒醸造所
販売店・飲食店
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立飛⻨酒醸造所
東京都立川市高松町1-23-14 Google Map
立飛駅から徒歩10分
042-527-1894
営業時間 11:00~18:00
定休日 火・水曜日
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PALE ALE
モルトにフォーカスしたイギリス系の味わいから、ホップにフォーカスした味わいに進化し、アメリカンな味わいに。さらにドライホップを採用したため、爽やかさと時折見せるフルーティなホップの香りが印象的になり、スルッと飲めてしまう軽やかさを楽しめる。
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PILSNER
チェコのザーツに加えて別の麦芽も追加したうえ、ホップの量も増やすことでジャーマンピルスの印象が加わり、日本人の舌に馴染みが良いピルスナー。麦芽由来のコクを残しつつ、オレンジやマスカットのような高級感ある香りをかすかに感じる仕上がり。