文豪が愛した土地の歴史を感じる
2023.8.8 INTERVIEW
明治・大正・昭和と、文豪や芸術家から愛され別荘地としても栄えた街・大森山王。歴史や異国情緒を感じさせるこの地に根差したビールを造るのが、代表・プロデューサーを務める町田佳路氏だ。直営店の「Hi-time」という名前は、商店街を歩く人がふらっと立ち寄りやすく、「Hi」と気軽に挨拶ができるような場所をという思いで付けられた。
JR大森駅から徒歩6分。人々が行き交うウィロード山王商店街(大森柳本通り商店街)を歩くと見えてくるのが、2019年8月に事業をスタートさせた大森山王ブルワリーの直営店「Hi-time」。スーパーの駐輪場跡地を改装してオープンしたテイクアウト専門店で、盛大に鎮座するワゴンが目印だ。
大森山王ブルワリーは、ビール造りだけでなく、大森の企業や人と共創しながらのイベントやコミュニティの企画・運営も行っている多彩なブルワリー。「Hi-Time」は、「いつでも気軽に大森山王ビールを楽しんで欲しい」という想いでビールのテイクアウト専門店として運営する傍ら、大森のことはなんでも聞いてもらえるような“街の案内所”も目指している。
ビールは、大森にゆかりある人物や場所がモチーフとなっているのが1つの個性である。
たとえば東京ペールエールスタイルの「KAORU」は、もともと海があり、文化人も集まっていたこの地は、文化が“薫り”、浜風も“香る”街であること。また鉄道敷設に尽力し、別荘地を山王小学校に提供した「井上“馨”」から名前が付けられている。
原材料には海に通ずるという意味から塩を加え、米も加えることで米由来のすっきりとした味わいと爽やかさが感じられる一杯。ラベルはたくさんの窓から見える海を連想させる、ハイカラなデザイン。一つひとつ丁寧に描かれ、眺めているだけでもストーリーを感じさせ、お土産やギフトにも贈りたくなるビールだ。
また、セゾンスタイルの「SAKU」は、馬込文士村の主役の一人「萩原朔太郎」をモチーフにしたビールで、ラベルには花が咲く過程が10コマで描かれている。
原料にレモンピールを加え、人生の花が咲く前の「苦み」を味わいとしても表現している。優しい苦みを感じるセゾンで、時間が経過すると少し甘みを感じられるのも、人生の変化を思わせる味わいだ。
大森山王ブルワリーが造るビールはどれも、食事と合わせやすいように、そして多くの方に親しんでもらえるようにと設計されている。
かつてこの地で暮らしていた文豪やこの土地の歴史を紐解き、ビールの中に落とし込んで造られたビール。グラスに注いで鼻で香り、ごくっと喉を鳴らして味わえば、大森が歩んだ歴史の断片が味わえるはずだ。
大森山王ブルワリー
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東京都大田区山王2-2-7 八景坂ビル3F (東京∞景) Google Map
京浜東北線大森駅 山王口から徒歩1分
070-8954-2616
17:00~22:30(火・水・木)
17:00~23:00(金)
14:00〜22:30(土・祝)
休業 日・月
RECOMMENDこのブルワリーのおすすめを飲んでみよう
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KAORU
もともと海があった大森山王。昔は熱海のように文化人たちの別荘がたくさんあり、文化かおる街だった。浜風“かおる”をネーミングに入れたビール。ラベルのデザインも、たくさんの窓から見える海をイメージしてて、ハイカラな雰囲気にしている。また海に通づるという意味で「塩」を入れており、米由来のスッキリ感と塩味で爽やかな味わい。
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SAKU
馬込文士村の主役の一人「萩原朔太郎」をモチーフにしたビール。ラベルも、花が咲く過程が10コマで描かれている。また、原料にレモンピールを入れて、味わいでも人生花が咲く前の「苦み」を表現している。優しい苦みを感じるセゾンで、時間が経過すると少し甘みを感じられるのも、人生の変化を思わせる味わい。