木樽の呼吸を聞いて育つ、
命が宿ったクラフトビール
2022.1.13 INTERVIEW
明治35年創業の老舗酒屋、籠屋秋元商店が経営する籠屋ブルワリー。醸造家の江上裕士氏により、和食に合うビールをメインに醸造している。食中酒として魅力的なビールを開発すること、日本人が誇る日本のビール"JAPANESE BEER"を造ることを目標だそうだ。
和泉多摩川駅から喜多見住宅行きのバスに乗り、駒井バス停で降車して徒歩1分のところに、籠屋ブルワリーはある。
籠屋ブルワリーを経営する秋元商店は、明治35年に竹籠を始めとした竹細工から始まり、その後日用品などの販売を経て、昭和からは「町の酒屋」として営んできた老舗だ。
日本各地の醸造元である酒蔵とも交流を深め、歴史的・技術的な知識を深く養ってきたと同時に、時代に合わせて日本人の嗜好に合ったお酒を育て、広めてきた。
現社長の代になり、お酒や食に関わる空間を通して人々の笑顔が溢れる街を育んでいきたい、そして「日本人が誇る日本のビールを造りこむんだ。」という強い思いから、2017年に発酵レストラン「籠屋たすく」と「籠屋ブルワリー」をスタートさせた。
籠屋ブルワリーは、日本のビール史に日本の色をもっと刻んでいきたいという思いから、日本が誇る“JAPANESE BEER”を造ることを心がけている。
日本伝統の醸造技術のビールへの応用を追求し、和食に合わせる日本のビールを造りこんでいという大和魂。
それは醸造の過程からも感ることができる。
籠屋ブルワリーのフラッグシップビールは、木桶を使い発酵を行っている和轍(わだち)。
近年のビール造りは密閉したステンレスタンクに酵母を添加し、単一の微生物で発酵させることで、安定した品質が造られている。
一方で木桶は呼吸をし、住み着く微生物が時間をかけて発酵を進める。
醸造家の江上裕士氏は、「醸造家は手間を惜しまず木桶をメンテナンスし、五感を働かせて、微生物が働く環境を整えることで、深みのある命の宿ったお酒を醸すことができます。」と話す。
和轍は、人・木樽・微生物が一緒に造りあげているビールなのだ。
こうした背景があることから和轍は、通常のビールでは相性が合いにくいと言われる和食に対して、驚くほど食材の特徴を活かして広げ、ビールらしいキレもありながら、上品な飲み心地を実現した。
旨味の強い魚や醤油、出汁とも非常によく合うように造られている。
また温度の変化で、より豊かな風味を感じることができるのも特徴のひとつで、ワイングラスでゆっくり飲むのがおすすめ。
「クラフトビールとは、造り手の想いが込められ、細部までこだわり抜いたビールだと思います。ビールは他の酒類と比べて、主原料の種類が多く、副原料や製法などを入れると、本当に多種多様です。造り手の思いを込めることで、他にはない唯一無二の個性を表現できます。また五感で造りこむ部分も多くあり、醸造現場で細部にわたって毎日“人”が感性を働かせて、各工程に『こだわり』を育んでいくことで、唯一無二の特徴的な表現ができるようになります。」と江上氏は答えてくれた。
籠屋ブルワリーのクラフトビールは籠屋秋元商店で購入できるほか、ビールと料理とのペアリングを楽しめる醸造所の隣に併設されたレストランの籠屋たすくでも味わうことができる。
呼吸をする発酵タンクから生まれたこだわりのクラフトビールを、ぜひ。
籠屋ブルワリー
販売店・飲食店
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籠屋たすく
東京都狛江市駒井町3-34-4 Google Map
和泉多摩川駅東口から徒歩20分
03-5761-8101
営業時間 水~金 17:00~21:00/土・日 11:30~21:00
定休日 月・火曜 -
籠屋秋元商店
東京都狛江市駒井町3-34-3 Google Map
和泉多摩川駅東口から徒歩20分
03-5761-8101
営業時間 火~土 10:00~20:00/日 10:00~19:00
定休日 月曜
RECOMMENDこのブルワリーのおすすめを飲んでみよう
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ゴールデンエール
透明感、みずみずしさが特徴のビール。甘みと苦味のバランスが取れていて「スッキリ!」という言葉がぴったりで、飲むほどに美味しく透き通るようにクリアな味。喉が乾いているときの一杯目として、ゴクゴクッと冷えている状態で飲むのがおすすめ。
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狛江ホップ〈狛江カスケード〉
狛江産のホップを使ったクラフトビール。毎年9月頃の初摘みをしてから、その年の狛江ホップで仕込む。香りも苦みもガツンとホップが効いていて、温度が上がっても美味しく味わうことができる。看板ビールのゴールデンエールをスルッと楽しんだ後、二杯目以降にこのクラフトビールを飲むのがおすすめ。