TABA – TAMAGAWA ALL BREWERIES ALLIANCE

「ふたこビール醸造所」と「多摩川河川敷」

2022.9.30 COLUMN

これまで二子玉川の街になかった「クラフトビール」として、2015年に誕生した「ふたこビール」。その代表、市原さんのビール作りにかける思いは、そのまま「街づくり」にもつながっていた。

クラフトビールで新しい「街の景色」を作りたい

二子玉川駅からすぐの場所にある、京都の町屋をイメージしたショップエリア「柳小路」。その「南角」の2階に、ふたこビールが実際に飲める実店舗「ふたこビール醸造所」がある。

ふたこビールの定番や季節限定商品が7種類、さらに「旅するビール」と題されたゲストビールや、手作りにこだわったおつまみなどが揃い、気軽にクラフトビールの魅力を味わえる店だ。

オリジナルクラフトビールのタップがずらり。
店内の醸造施設から直送されるクラフトビール。

店内には150リットルの仕込み釜とタンクを備えた醸造設備もあり、ここで作られたビールは、量り売りによるテイクアウトも可能だ。

二子玉川は絶好のチェアリングスポットでもある

二子玉川といえばおしゃれな街のイメージだが、駅から5分も歩けば、そこは多摩川河川敷。驚くほどに自然豊かな風景が広がっていて、チェアリングスポットとしてこんなに便利な街はない。

そう、二子玉川は、「チェアリングタウン」でもあったのだ!

そこで今日は、ふたこビール醸造所で定番の「フタコエール」と「フタコIPA」を購入し、多摩川河川敷でチェアリング。

代表の市原さんと、お店から歩いてすぐの河川敷へチェアリングをするために移動。

市原さん:チェアリングって、「ミズベリング」(※)から始まったのかな? というイメージがあったんですが。

(※)まだまだ十分に活用されていない、日本の水辺の新しい活用の可能性を切り開くための官民一体の協働プロジェクト。

パリッコ:もともとは僕と友達のスズキナオというライターさん、ふたりで勝手に始めたんです。チェアリングと名づけたのも半分悪ふざけみたいな感じで。だけどそもそも、僕たちは水辺でぼーっとお酒を飲むのが好きだったし、チェアリングをしていていちばん楽しいシチュエーションって、やっぱり水辺なんですよね。ゆらゆらしている水面を眺めているだけで、飽きることがなくて。

市原さん:ねー。また、今週の天気予報を見たら曇りと雨しかなくて心配してたんですけど、天気もちょうどよくて! パリッコさん、晴れ男ですね。

パリッコ:いや〜……ははは。恐縮です。

オリジナルのグラウラーはレンタルも可能。

パリッコ:今日はこの最高のシチュエーションで、「ふたこビール」についてのお話を聞かせてもらいたいです。

市原さん:はい。クラフトビール作りを始めて、もう8年目になります。もともとは、「二子玉川の街になにがあったらいいかな?」というテーマの地域のプレゼン大会で、私のママ友が「クラフトビール」を提案したのが始まりなんです。そこからいろいろあって、ふたりで「ふたこ麦麦公社」を設立し、今は私が代表をしています。

パリッコ:すごいですね。いきなり実業家に。

市原さん:実業家じゃないですよ! いきがかり上そうなっただけなんです(笑)。当時は会社で働いていたので、最初のうちは兼業で。だけど、平日の打ち合わせがあまりにも増えたり、両立が無理になってこちらに専念するようになりました。

パリッコ:そもそも二子玉川にクラフトビールがないほうがおかしかったというか、すごくクラフトビールが似合う街ですよね。

市原さん:そうなんですよね。そして、やっぱり街のビールなので、今、パリッコさんとチェアリングしているみたいに「街の景色のなかで飲めたらいいな」ということを常々考えているんです。「ふたこビール醸造所」のお店ができたのは3年前で、それまでは実際にビールを提供できる場所、人が集まれる場所がなかったんですね。

パリッコ:せっかくの街のビールなのに。

市原さん:そこで、この河川敷でみんなでビールを楽しむイベントができないか? というアイデアを出して、実際に何度か開催したんです。キッチンカーでビールを提供して、フードも出してと、いろいろと許可をもらうのが大変だったんですけど。

そうしたら、多摩川河川敷ってただでさえ気持ちのいい場所じゃないですか。そういった場所にビールがあることで、人の笑顔が何倍にも膨らんで、ものすごく楽しかったんですよ。ビールを飲みながらだと自然と会話もはずんで、「次はこんなことができないかな!?」なんてアイデアも湧いてきて。

パリッコ:なんて素晴らしいんでしょう!

市原さん:なにより、「また会おうね!」って言い合えるのが良かったんですよね。街に新しい景色が生まれているなって感じられましたし。もちろん美味しいビールを作ることは最大の目標なんですが、それと同じくらい「ビールで街の景色を作る」ということを大切に考えるようになりました。

パリッコ:単にビールを作っているとか、お店を経営しているという枠を超えて、いろいろとお考えなんですね。

市原さん:そうですね。そのためにも美味しいビールを作らないと。ビールが美味しくないと、人は笑顔にならないんで(笑)。

(左から)「フタコエール」 「フタコIPA」で乾杯!

パリッコ:実際にお話を聞いてみて、今の僕の最大の関心は、そんな市原さんの行動力に関してなんですが。もともとこのあたりのご出身なんですか?

市原さん:いえ、私はうどん県の香川出身なんです。だけど二子玉川にはもう20年くらい住んでいて、大人になってからの自分の居場所という感じですね。ただ、ビールを作り始めるまでは、街づくりなんて考えたこともなかったんです。だけど、街のビールを作るようになったら、街づくりに関わっている人にやたらと会うようになったんですよね。

パリッコ:なるほど、そういう活動に、市原さんが向いていたんでしょうね。

市原さん:う〜ん、おもしろがっちゃったというのはあるかもしれませんね。あとは友達によく「バカだからできてる」って言われます(笑)。

パリッコ:わはは! 最高。

市原さん:そういうお褒めの言葉をみんなからいただきます(笑)。「そんな儲からないこと、普通一生懸命やらないよね〜」って。だけど、みんながみんな賢かったら、おもしろいことって起きないじゃないですか。だからたまには私のような人間がいてもいいのかなって思ってます。

市原さん、どこまでも突っ走ってください!
駅からすぐで、この天国。
リユースできるテイクアウト用のカップ。

 


ブルワリー
ふたこビール醸造所
住所:東京都世田谷区玉川3-13-7 柳小路南角2F
電話:03-6411-7125
営業時間:11:30〜22:00
定休日:不定休

チェアリングスポット
Mizube Fun Base
住所:東京都世田谷区鎌田1-1